★高層ビル 空きテナント問題★ 西新宿地区の企業転入について

 2008年のリーマンショック以降、西新宿の高層ビル街は空室が目立っている。しかし、2003年の平均賃料の半値以下(2万3000円)に値下げした結果、空室が大幅に減りつつある。新宿駅近くのエルタワーは坪2万5000円を割る賃料で、空室を半減させた。
 新宿三井ビル・NSビルでも大手メーカーを誘致し、入居率を大幅に向上させた。ライバルの品川・汐留では再開発ビルが次々竣工して供給過多となり、1年前と比べ空室率が軒並み悪化している。対して、西新宿超高層高層ビル街は、他のエリカに比べても割安の賃料を提示して、企業の拠点集約化の受け皿となっている。だが、同じ超高層街区でも、新宿駅から10分ほどのパークタワーなどでは、今も巨大な空室を抱え込んだままで、「駅に近い」立地と「駅から遠い」立地の差が出てきている。入居率が向上しても、賃料の値下がりはしばらく続きそうだ。
 
 三井にベネッセ入居
 〜初台、神保町から集約化〜

 新宿三井ビルでは、今年2月から春にかけて、5フロアにベネッセコーポレーションが入居する。神保町都初台のオペラシティに分散していたオフィスを集約化。これにより三井ビルは、ほぼ満室になる。
 また1400坪の空室を抱えていた「西新宿三井ビル」でも、今春から今夏にかけて900坪分を埋め、空室を1フロア分500坪へと減らす。
 賃料は、新宿三井ビルで坪2万円台前半、西新宿三井ビルで坪2万円を割っており、割安感が奏功した。
 4000坪強の空室を抱えている新宿NSビルでも今春以降、カネボウ化粧品が入居し、これによって空室を900坪減らす見込みだ。
 オークタワーでは、昨年8月から9月にかけて、コンサルタント業の「パシフィックコンサルタンツ」首都圏統括本部(2フロア半)、IT企業の「ジャストシステム」が入居した。パシフィックコンサルタンツは同じ西新宿超高層街の小田急第一生命ビルから、ジャストシステムは港区の北青山から、それぞれ移転してきた。オークタワーは坪2万円台半ばと、周辺の相場から見ると高い賃料設定ながら、フリーレントを儲けることで実質的には大幅な値引きを図っていた。
 昨夏には1200坪の空室を抱えていた「日土地西新宿ビル」も、今春春頃までには900坪へと空室を減らす。

 野村、エルタワーは省スペースで貸し埋める
 企業の「集約化ニーズ」に応えることによって、空室を埋めるのではなく、省スペースを多くの企業に貸すことで、空室を大幅に減少させているのが、新宿エルタワー新宿野村ビルだ。
 新宿駅直近のエルタワーでは、一時は坪5万円台だったのが、坪2万5000円を割る賃料にまで値下げしたことで、昨年春頃から空室を大幅に減らすことに成功した。
 元々、駅直結ビルとして利便性の高さでは定評があるだけに、昨年9月に紳士服の「はるやま商事」IR・広報東京オフィス(4階・新設)、同10月には専門学校の「資格の大原」(25階・新設)、今年1月5日には「WAVE新宿校」(15階・新宿駅南口の京王モールに直結する小島ビルからの移転)を次々と入居させた。3000坪の空室が、今では半分の1500坪に減少している。
 野村ビルでは、昨年5月に人材会社の「毎日キャリアバンク」(23階・新丸の内ビルディングからの移転)を、6月には新設の会計コンサル会社「アカウンティング・アドバイザリー」(6階)、7月にはソニー生命保険第3営業部(11階・神保町からの移転)を、9月には「住鉱潤滑材」本社(14階・新宿住友ビルからの移転)を次々と誘致した。
 
 今年に入ってからも、1月には人材サービスの「NECビジネスプロセッシング」(7階・港区の三田国際ビルからの移転)が入居した。昨年春には2000坪に達していた空室が1300坪まで減少している。

 第一生命は坪1・6万円
 〜3000坪の空室で破格の賃料〜

 一方で、空室に改善が見られなかったのが「小田急第一生命ビル」だ。この26階ビルは、小田急グループのホテル「ハイアットリージェンシー東京」とのツインビルとして建てられている。それもあって2008年には、小田急のグループ会社である小田急西新宿ビルが、このビルを第一生命から取得している。
 同ビルは、昨年夏に2フロア半を借りていたパシフィックコンサルタンツが「オークタワー」に移転したことで、空室は3000坪強に達した。
 他の超高層ビルと比べ、新宿駅から遠いことや、竣工から30年以上経過していることが、企業側から敬遠された。
 このためビルオーナーの小田急西新宿ビルは、昨年末頃から坪1万6000円と、2万円を大きく割る破格の賃料を提示し「空室減少が最優先」の背作を打ち出している。
 アイランドタワーも3000坪強の空室を抱え込んだままだ。ビル地権者がフロアごとに別れて所有し、まとまったフロア提供が難しいことと、地権者ごとに賃料に開きがあることが空室の解消を難しくしている。
 新宿駅からの距離が遠いパークタワーも、6000坪強の空室を抱えたままとなっている。