TPPと農業

悲惨だったのは、農業関係者たちである。
彼らは、TPPの参加による農業や食料への打撃を懸念し、声をからして反対を訴えた。
だが、TPP推進論者はもちろん、世論も、「農協や農家は利害関係者であり、自分たちの利益を守るために反対運動をしているに過ぎないのだ」と決めつけ、彼らの言い分に、一切、耳を貸そうとはしなかった。
もちろん、彼らは、農家で生計を立てているのだから、利害関係者に決まっている。
しかし、農業について一番詳しく、日本の農業を最も大切に考えているのは、農業で生計を立てている者ではないのか。
それを利害関係者だからと言って無視するということは、プロの意見を無視するということだ。

もちろん日本の農業にも問題はあろう。だが、日本の一戸当たりの農地面積は、アメリカの90分の1、オーストラリアの約1500分の1程度という。規模による生産性の違いが歴然とある。
そんなアメリカ産の農産品と関税抜きで競争しても生き残れるように農業を構造改革しろなどと、農業をやったこともない素人たちに批判され、
少しでも反論すれば利害関係者のレッテルを貼られて、話もまともに聞いてもらえず、1年以上も一方的に叩かれ続けた農家の気持ちがどういうものか、想像できるか。
農業関係者に加えられたのは、言論弾圧である以上に、集団リンチである。