つくる会 から、安倍晋三について

<声明>日韓両政府の「慰安婦問題」合意に強く抗議する

                           平成27年12月29日
                         新しい歴史教科書をつくる会

日本・韓国両政府は、12月28日、韓国ソウルにおいて外相会談を行い、これまで日韓両国間の大きな懸案となってきた、いわゆる従軍慰安婦問題について合意したと発表した。
しかし、その合意内容は、教科書問題と関連してこの問題に一貫して取り組んで来た私たち「新しい歴史教科書をつくる会」として、到底受け入れられる内容ではない。強く抗議の意思を表明し、以下にその問題点を述べる。
 
第一に、慰安婦制度を、「軍の関与」のもとで女性の尊厳を傷つけた問題であるとして多くの言葉を連ね、「日本政府は責任を痛感する」として「おわびと反省の気持ち」を表明した。これは慰安婦制度について根本的に誤った事実認識に基づく発言である。
まず、「軍の関与」を否定的な文脈で真っ先に使っているが、実際は、「軍の関与」は、業者に運営規則を指導するなど女性の待遇改善に寄与した人道的な制度だったのである。「軍の関与」を強制連行や奴隷状態と関連させるのは、朝日新聞の情報操作に始まり、河野談話にも反映された悪しきレトリックである。河野談話が出された当時は、国民全体が騙されていた時期だが、今では朝日新聞が記事を撤回して謝罪した。にもかかわらず、当時の思い込みのままの文書が使われたことに驚かざるを得ない。国家が自国の過去の軍隊について、反軍思想に立って断罪するなど、あってはならないことである。
慰安婦問題については、河野談話の撤回こそ日本の名誉回復の手立てであるのに、それを日本政府が改めて追認してしまったことは、取り返しのつかない失敗である。
 
第二に、今後慰安婦及び遺族に対するフォローとして、韓国政府が財団を設立し、それに日本政府が10億円もの金を注ぎ込むことになった。しかも、それが政府の金であることを強調している。それによって、日本は、国家による補償が済んでいるとする従来の立場を放棄し、「国家が補償せよ」と迫っていた韓国の運動団体に屈服したのである。
どのようなかたちであれ、日本が国家として1円でも金を支払えば、世界は日本が自らの非を認めたと認識する。私たち日本国民の税金を、このいわれのない言いがかりに対して使うべきではない。

第三に、今回の声明で、日韓間の慰安婦問題が、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」としたことである。国家間で結ばれた条約を一方の側が不満を示せば、金を払って改めて取り決めをするという外交は非常識である。「完全かつ最終的に解決された」1965年の日韓請求権協定を覆して恥じない韓国政府と、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」という。さらにこれは文書での合意すらなされなかった。茶番劇というほかはない。
 
第四に、ソウルの日本大使館前の慰安婦像について、「関連団体との協議を通じて適切に解決するよう努力する」としたことだ。これまでの報道では、日本政府は韓国政府に対し、この慰安婦像の撤去を交渉の前提となる最低条件として求めるとされていた。しかし、共同記者会見を見る限り、その撤去については、韓国政府は「努力する」としただけで、何の確約もしていない。「努力したけどダメでした」と言われればおわりである。現に韓国の民間運動団体は早手回しに声明を出し、撤去する意思のないことを明言している。
世界に広がる慰安婦像については言及すらされていない。本来、この会談で日本政府が求めなければならなかったことは、世界に拡がる慰安婦像の設置を、韓国政府の主導のもと、すべて撤去させることではなかったのか。今後も世界中で慰安婦像の設置によるディスカウント・ジャパンの活動が継続されることは疑いない。
「国連など国際社会において、互いに批判・非難をしない」という点も、効果がゼロだとまではいわないが、民間は政府に制約されないから、尻抜けであって意味がない。 
 
安倍総理は、捏造された歴史によって貶められた日本人の誇りを取り戻してくれる指導者であることを自ら自認し、安倍政権は多くの国民の期待を背に受けて誕生した。
しかし、今年、「軍艦島世界遺産登録では、「強制労働」を認める大失態をおかし、さらに8月の「安倍談話」では、事実上、日本の侵略を認める文言を世界に発信した。10月には「南京大虐殺」がユネスコの記憶遺産に登録された。そして極めつけが今回の日韓合意である。
日本にとってほとんど何のメリットもないこのような日韓合意を、わざわざ年末に駆け込み妥結させたことは、合理的な理由を見い出しがたい。現時点でこうした「解決」など国民は望んでいない。今回のことを通じて、日本政府・外務省の中に外国の利益を代弁する形で動くグループの存在が指摘されている。私たちは今後とも歴史戦に粘り強く取り組むとともに、こうした視点からも日本の国家のあり方を見直さなければならない段階に至っていると考える。
                                  (以上)
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