公募増資(Public Offering)戦略とは?~対面営業マンとの関わりも大事!~

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皆さん、PO(Public Offering)という言葉をご存じですか?
日本語では「株式の公募」と訳したりします。

「あー、公募ね。発表されたら株価下がっちゃうから困るんだよね・・・」
確かにその通りです。株式価値の希薄化を引き起こしてしまいますから、いかに攻めの資金調達だとはいえ、株価にはネガティブなインパクトを与えてしまうのが一般的です。
従って、個人投資家の間では、「公募増資=悪」と思われていると言っても過言ではないでしょう。

しかし!ヘッジファンドの間では、「公募増資=稼げるチャンス」と言われており、大人気イベントの一つなんです。

そこで今回は、イベントドリブン型のヘッジファンドが日常的に行っているPO戦略をご紹介したいと思います。

POの基本的な流れとは?

皆さんにもお馴染みの「株式の公募」ですが、発行価格が決定され、実際に新株が受け渡されるまで、どのような流れでイベントが進むのかご存じですか?

①企業が「株式の公募」を発表
②発行価格の決定
③売り出し期間
④新株の受け渡し

以上の①~④が一般的な流れになります。A

重要なのは②の項目なのですが、皆さんは発行価格がどうやって決まるのかご存じですか?
下の図を見てください。

これは先日リクルートHDが「株式の売り出し」を発表した時の資料です。
この事例では、「公募増資」ではなく「株式の売り出し」でしたが本質は同じだと考えて大丈夫です。
必ず、「発行価格(売出価格)」という項目があるのをチェックしてください。
ここでは「未定(日本証券業協会の・・・2019年9月10日(火)から2019年9月12日(木)までの間のいずれかの日)の・・・終値に0.90~1.00を乗じた価格を仮条件として・・・」と記載がありますね。

この通りに決まるんです。

え・・・?それでどうやってヘッジファンドは儲けるの?

はい、解説します。

実は、上の事例で説明すると、9月10日~9月12日の間に決まると言っていますが、何か特別なことが起こらない限り、ほぼ初日の9月10日に決まるという慣習がありますB

また、終値に0.9~1.0を乗じた価格とありますが、ほとんどのケースが0.97を乗じることになります。(つまり当日終値から3%ディスカウントされた水準)C

従って、いろいろ長々と説明が書かれてはいますが、「初日の終値から3%安い水準で決まる」と思っていれば、ほぼ問題ないのではないかと思います。

下の図がリクルートHDの売出価格決定の資料です。

やはり初日の9月10日に3%程度のディスカウントで決まっています。

PO戦略のポジション取りは?

ここまで来れば、もうお分かりでしょう。
空売りとPOへの応募を組み合わせて、このディスカウント分を狙いにいくんです。
今回のケースでいくと、9月10日のザラ場の段階で「今日の引け後に価格決定が発表されるだろう」と決め打ちをして、10日の引値で株のショートポジションを作ります。
そして公募に応募して、無事に受け渡しされた株券を現渡で決済してしまえば終了です。
見事にディスカウント部分だけ抜き取れたことになります。

しかし注意点として幾つか。
① POで自分にどれだけ新株が配分されるのかを概算でいいので事前に知る必要がある。
② リスクの低い戦略なので、多くの投資家が実行します。その結果、価格決定日にショートポジションを作ってから現渡でポジションを解消するまでの間に、高い借株料が発生する場合がある。
などが考えられます。

特に①に関しては、主幹事を引き受けるような大手の証券会社の担当者と普段から懇意にしている必要があります。オンライン証券が当たり前の時代になった今ですが、この話を機に一度コンタクトを取ってみてはいかがでしょうか?
もっと詳しく教えて欲しいなど、ご質問のある方はお待ちしております!


eワラント証券 トレーディング部ヴァイスプレジデント 吉野 真太郎)

※A 余談ですが、公募を引き受けた主幹事証券は、②の翌日から④の前日までの間、必要と判断すれば自己勘定によって価格の安定操作を行います。発行価格を死守するのが主幹事証券の使命ですから、発行価格近辺で買い注文を入れて価格を操作することがあります。

※B 特別な事とは、初日にストップ安になったとか、そうでなくても余りにも株価が大幅安した、などの事例が考えられます。

※C 稀に3%ディスカウント以外で決まることがありますが、それはあまりにも販売が不人気だったケースであり、それでも5%ディスカウント以内で決まることが一般的です。つまり3%~5%ディスカウントの水準で決まると思っていれば大丈夫です。

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

公募増資(Public Offering)戦略とは?~対面営業マンとの関わりも大事!~ – eワラントジャーナル

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