税制:外国子会社から受ける剰余金の配当 外国子会社配当益金不算入制度(Foreign Dividend Exclusion)について

内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額について、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない(法23の2①)。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000034

第二十三条の二 内国法人が外国子会社(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の二十五以上に相当する数又は金額となつていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。以下この条において同じ。)から受ける前条第一項第一号に掲げる金額(以下この条において「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない
2 前項の規定は、次に掲げる剰余金の配当等の額については、適用しない
一 内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額で、その剰余金の配当等の額の全部又は一部が当該外国子会社の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の法令において当該外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその剰余金の配当等の額
二 内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額(次条第一項(第五号に係る部分に限る。)の規定により、その内国法人が受ける剰余金の配当等の額とみなされる金額に限る。以下この号において同じ。)の元本である株式又は出資で、その剰余金の配当等の額の生ずる基因となる同項第五号に掲げる事由が生ずることが予定されているものの取得(適格合併又は適格分割型分割による引継ぎを含む。)をした場合におけるその取得をした株式又は出資に係る剰余金の配当等の額(その予定されていた事由に基因するものとして政令で定めるものに限る。)
3 内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額で、その剰余金の配当等の額の一部が当該外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入されたものである場合には、前項(第一号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、その受ける剰余金の配当等の額のうちその損金の額に算入された部分の金額として政令で定める金額(次項及び第七項において「損金算入対応受取配当等の額」という。)をもつて、同号に掲げる剰余金の配当等の額とすることができる
4 内国法人が外国子会社から受けた剰余金の配当等の額につき前項の規定の適用を受けた場合において、当該剰余金の配当等の額を受けた日の属する事業年度後の各事業年度において損金算入対応受取配当等の額が増額されたときは、第二項第一号に掲げる剰余金の配当等の額は、同項(同号に係る部分に限る。)及び前項の規定にかかわらず、その増額された後の損金算入対応受取配当等の額として政令で定める金額とする
5 第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない剰余金の配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする
6 税務署長は、第一項の規定により益金の額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第一項の規定を適用することができる
7 第三項の規定は、同項の剰余金の配当等の額を受ける日の属する事業年度に係る確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定の適用を受けようとする旨並びに損金算入対応受取配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入された剰余金の配当等の額を明らかにする書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する
8 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により外国法人の株式又は出資の移転が行われた場合における第一項の規定の適用その他同項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める
 


上記の「外国子会社」とは、内国法人が外国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き直接に有している場合のその外国法人をいう。なお、外国法人の所得に課された外国法人税を内国法人の納付する法人税から控除する旨を定める租税条約の規定において内国法人の外国法人に対する持株割合が緩和されている場合には、本制度の対象となる外国子会社の判定は、その割合により行う(法23の2①、令22の4、基通3―3―3)。

〈備考〉

〇外国子会社配当益金不算入の規定の適用を受けるためには、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載するとともに、一定の書類の保存を要する(法23の2⑦、規8の5)。

〇内国法人が一の事業年度に二以上の剰余金の配当等を同一の外国法人から受ける場合において、当該外国法人が外国子会社に該当するかどうかは、それぞれの剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日において当該内国法人の保有する当該外国法人の株式又は出資の数又は金額に基づいて判定することに留意する(基通3-3-2)。

(自己株式として取得されることを予定して取得した株式に係るみなし配当)

次に掲げるものについては、外国子会社配当益金不算入制度の規定は通用しない(法23の2②)。

① 外国子会社等から受ける剰余金の配当等の額で、その外国子会社の国等の法令において、所得の金額の計算上損金の額に算入されることとされているもの

② 法人が受ける配当等の額(発行法人による自己株式の取得により、その法人が受ける配当等の額とみなされる金額に限る。)の元本である株式等で、その配当等の額の生ずる基因となる法人税法第24条第1項第5号に掲げる事由(自己株式の取得)が生ずることが予定されているものの取得をした場合におけるその取得をした株式等に係る配当等の額でその予定されていた事由に基因するもの

また、その取得した株式等が適格合併、適格分割又は適格現物出資により被合併法人、分割法人又は現物出資法人から移転を受けた株式等である場合には、益金不算入制度が適用されないこととなるみなし配当の額は、その予定されていた事由がこれらの法人のその株式等の取得の時においても生ずることが予定されていた場合におけるその予定されていた事由に基因する配当等の額となる(令22の4③)。
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定義

外国子会社配当益金不算入とは、2009年度税制改正において導入された制度であり、一定の外国子会社から受け取る配当金を益金不算入とするものです。これは、外国子会社からの配当にかかる二重課税排除の方法を、従来の間接外国税額控除から変更する意味を有しています。

本制度導入の狙いは、適切な二重課税排除の方法を維持しつつ、制度を簡素化することにより、外国子会社の留保金を日本に還流(配当)させ、経済の活性化を図ろうとするところにあります。

外国子会社配当益金不算入の対象となる外国子会社とは次の2つの要件を満たす外国法人とされています (法人税法23条の2)。

次の(1)または(2)の割合のいずれかが25%以上となっていること(租税条約により、これより低い割合になることもあります)。
(1) 外国法人の発行済株式等のうち、内国法人が保有している株式等の割合(当該外国法人が保有する自己株式等は除外して計算)
(2) 外国法人の発行済株式等のうちの議決権のあるもののうち内国法人が保有している議決権のある株式等の占める割合
上記1. の状態が剰余金の配当等の支払い義務が確定する日以前6カ月以上継続していること。

 本制度の対象となる配当の額は、法人税法23条1項1号に掲げる金額および同24条のみなし配当の金額となります(一部対象とならないものもあります)。

 本制度により実際に益金不算入となる金額は、外国子会社から受け取る剰余金の配当等の額からその剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとされた金額を控除した金額となります。この費用の額に相当する金額とは、具体的にはその剰余金の配当等の額の5%相当額とされていますので(法人税法施行令22条の4②)、結果的に剰余金の配当等の額の95%に相当する金額が益金不算入となります。

 本制度の適用対象となる配当等の額に対して課される外国源泉税等の額は、外国税額控除の対象とならず(法人税法施行令42条の2⑦三)、損金算入もできません(法人税法39条の2)。

(注)税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting: BEPS)行動2を踏まえて、2015年度税制改正により、本制度の対象から、外国子会社居住地国における損金算入配当等が除外されることとなりました(オーストラリア子会社からの償還優先株式(MRPS)やブラジル子会社からの利子配当等)。なお、本制度の適用対象から除外する配当等の額に対して課される外国源泉税等の額は、外国税額控除の対象とされます。本改正は、2016年4月1日以後に開始する事業年度において内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について適用されます。2016年4月1日において有する外国子会社の株式等に係るものについては、2018年4月1日以後に開始する各事業年度において受ける配当等の額について適用されます。

 注:BEPS (英: Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)とは、現地税制や国際課税原則の観点からは合法ではあるが、法人税収を著しく減少させる国際的税務プランニングのこと。 
 多国籍企業が、自らの活動の実態と現行の国際課税ルールや各国の税制の間にずれが生じていることを奇貨として、グループ各企業の事業活動を通じて得られた収益(=税源)を侵食させ、あるいは、タックス・ヘイブンなどの軽課税国等に利益を移転させることにより、結果としてどの国においても課税されない国際的二重非課税の状況を作り出し、合法的に税負担を減少させ、税引後利益を増大させること。 

外国子会社配当益金不算入制度(Foreign Dividend Exclusion)
 外国子会社配当益金不算入制度とは、日本親会社が一定の外国子会社から受ける配当を益金不算入とするもので、外国子会社の利益の日本国内への資金還流を促進する観点から、それまでの間接外国税額控除による二重課税排除の方式に代えて創設された制度である。 

 

制度の概要

 日本親会社が外国子会社から受ける配当は、その配当(源泉税控除前)の95%が益金不算入とされる。
 外国子会社配当益金不算入制度の適用対象となる配当に係る源泉税については、外国税額控除の対象外となり、損金にも算入されない。

 

外国子会社の範囲

外国子会社とは、以下の要件を満たす外国法人をいう。

 日本親会社により、発行済株式等の25%以上の株式等※1を保有されていること。
その保有期間が配当の支払義務が確定する日以前6ヵ月以上※2継続していること。

※1 発行済株式等の25%以上の株式等

 持株割合は、発行済株式の総数又は議決権のある株式のうち、日本親会社が保有している株式数の占める割合にて判定する。
 日本が外国子会社の居住地国と締約している租税条約の二重課税排除条項において、25%未満の割合が定められている場合には、外国子会社配当益金不算入制度の対象となる外国子会社の判定は、その軽減された割合を用いて行う。
 連結納税制度を適用している法人については、連結納税グループ全体の持株割合を用いて25%判定を行う。ただし、連結納税グループ全体の持株割合により判定する場合には、租税条約により25%未満に軽減された持株割合を用いることはできない。

※2 支払義務が確定する日以前6ヵ月以上

 外国子会社が、配当の支払義務が確定する日以前6ヵ月以内に設立された新設法人である場合には、その設立の日から配当の支払義務が確定する日まで、25%以上の株式等を継続保有されていれば、6ヵ月判定の要件を満たすことになる。
税制適格組織再編成(適格合併等)により、合併法人等が被合併法人等からその保有する外国法人の発行済株式又は議決権のある株式の25%以上の移転を受けた場合には、その被合併法人等の適格組織再編成前における保有期間を含めて6ヵ月判定を行う。

 

 
外国において損金算入される配当の取扱い

 日本親会社が外国子会社から受ける配当の額の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において損金算入することとされている場合には、その配当の額は外国子会社配当益金不算入制度の対象外とされ、全額が益金に算入される。

 日本親会社が外国子会社から受ける配当の額の一部が、外国子会社の所得の金額の計算上損金算入された場合には、一定の要件のもと、その損金算入額に対応する配当の額のみを外国子会社配当益金不算入制度の対象外とすることもできる。

 上記により、外国子会社配当益金不算入制度の適用対象外とされた配当に対して課される源泉税は、損金に算入するか外国税額控除の対象とすることができる