あいちトリエンナーレへの公的資金助成の法的整理

国が文化芸術支援を行う理由

 そもそも、国はなぜ文化芸術活動に助成・補助を行うのか。

 戦後まもなく日本の文化行政は、戦前の反省もあり、控えめなものだった。しかし、高度経済成長期を経て、豊かな時代を迎えると、物質だけではなく心の豊かさを求め始める人々も増えていく。1980年代になると、各地の自治体が次々に美術館ホールなどを建設した。ハコモノ行政などと批判もされたが、こうした文化施設が、人々が文化芸術に接する機会を増やしたことは間違いないだろう。

 2001(平成13)年になって、文化芸術振興基本法が制定され、文化芸術振興における国や地方公共団体の責務が定められた。同法第一条では、その目的が次のように謳われた。

文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであることにかんがみ(中略)文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とする

出典:文化芸術振興基本法より

 そして、第2条の「基本理念」の筆頭にはこう書かれている。

文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない

出典:文化芸術基本法

 この法律は、2017(平成29)年に改正され、文化芸術基本法と改められた。その際、前文に文化芸術の多様性と表現の自由の大切さを意識した、次のようなフレーズが入った。

〈文化芸術により生み出される様々な価値を生かして〉

出典:文化芸術基本法

〈文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し〉

出典:文化芸術基本法

 したがい、行政が助成対象に積極的に関与できるように条文改正が必要だと思います。

文化芸術基本法 条文リーフレット(1.3MB)

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/kihon/geijutsu_shinko/pdf/kihonho_leaflet.pdf